幸福になりたい。でも幸福ってなんだろう。
フローまたはゾーンと呼ばれる心理状態。
幸福感とは異なるこの体験を重視して充実した人生をおくる人々も多い。
幸福感とは異なる充実感のある状態。
この記事ではフローとはなにか、どうすればフローを活用できるかについて、まとめます。
- フロー体験は幸福感とは異なる条件で発生
- フローが起こりやすいのは「レジャー活動」「仕事・勉強」
- 心理的なカオスを回避せよ
- フローの4つ発生条件を活用
体験の質~幸福感とフロー
フローとは
体験者が「それはフロー(流れ)の中にいるようなのです」と述べていることから、フロー体験と呼ばれます。
Wikiでは以下のように説明しています。
フロー(flow)とは、人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。
出所『Wikipedia』
スポーツの世界では、「ゾーン」とも呼ばれます。
心理学者のチクセントミハイさんは「最適経験」とも呼んでいます。
フローは体験なので、どのようなものか、イメージが難しいです。
次に、体験者の環境も合わせて確認して、具体的なイメージをとらえていきましょう。
日常生活で普通に経験する状態ですので、「ああ、そういうことか」となると思います。
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日常生活における行為と心理状態
経験の量
はじめに、僕たちの日常生活がどのようなものか見ていきます。
日常生活をどのような活動に費やしているかのアメリカの研究結果が以下です。
典型的な成人とティーンエイジャーが報告した昼間の活動にもとづく、最大値と最小値の統計値です。
日本では「仕事、勉強」がアメリカに比較すると高いかもしれません。
僕の感覚だと、1週間のうち概ね50%が仕事を含む生産的活動。
生きる上でやらなければならない生活維持活動が25%程度。
レジャー活動が25%程度という結果です。
1パーセントは概ね1時間に相当します。
体感どおり「仕事」が日常の半分の時間を費やしています。
経験の質
では、それぞれの活動は、どのような体験なのか次に見ていきます。
幸福感が高いのは、「食事」「会話・社交」、そして「趣味、スポーツ等」です。
ここは想像通り。
これに対して、フローが高い活動は、「趣味、スポーツ等」「会話・社交」「車の運転」、そして「仕事・勉強」です。
「仕事・勉強」が高いのが意外な部分です。
チクセントミハイさんの研究では、経験抽出法という方法でデータを収集しています。
さまざまな層の男女の被験者に1週間ポケットベルを持ってもらい、1週間毎日、無作為に8回、ベルが鳴るごとに、その瞬間何をしているか、どんな気分であるか記録してもらうという方法です。
その瞬間、挑戦の度合いと、能力の使用についての体感を10段階で評価してもらい、挑戦と能力の両方で、その週の平均以上にマークした場合、フローと判定しています。
フローの時間が多い被験者は、その体験を「力強い」「活動的な」「創造的な」「内容の濃い」「刺激的な」ものと感じる傾向が高いようです。
経験の内容
もう少し、別の観点も入れたデータを見てみましょう。
レジャー活動を「フロー」「くつろぎ」「無気力」「不安」の軸で評価した集計値です。
フローが高い「ゲームとスポーツ」と「趣味」については、「無気力」のポイントが低く、「不安」のポイントが相対的に高いです。
それ以外のフローが低い活動については「くつろぎ」「無気力」が相対で高く、「不安」が低い傾向があります。
フローとはどのような心理状態か
フロー体験者の体験談から抽出したフローの心理状態は以下の4つです。
- 深く無理のない「いま」の経験への没入状態がある。
- 自分の行為を統制している感覚がある。
- 自己意識が消失する。フロー後はより強く自己意識が現れる。
- 時間感覚が変わる。
何かに集中しているときは、時間があっという間に経過します。
そして、それは終わったあとで、「ああ、楽しかったな」と振り返る、そんな経験がフローと言えると思います。
挑戦と能力という観点でフローを表現すると図のように説明できます。
挑戦と能力が高い水準でバランスした場合に、フローが経験されます。
スキルより挑戦水準が高い場合は、フローというよりより集中した「覚醒」状態となり、
スキル水準より、低い挑戦水準の場合は、体験を「コントロール」する状態となるか、またはリラックスした状態となります。
あまりに挑戦水準が低い場合は、「退屈」します。
心理学者チクセントミハイさんは以下のように説明しています。
引用文中の「最適経験」はフローのことです。
最適経験とは、目標を志向し、ルールがあり、自分が適切にふるまっているかどうかについての明確な手掛かりを与えてくれる行為システムの中で、現在立ち向かっている挑戦に自分の能力が適合しているときに生じる感覚である。
出所『フロー体験 喜びの現象学』チクセントミハイ著
フローを活用する
僕たちはみんな幸福な人生を求めています。
有限な人生という時間をいかに使うか。
16世紀以降、「時間」は物質の状態の変化の指標として認識されるようになりました。物理学の時間。
20世紀にはいると、時間は「お金」の尺度として認識されています。時間を割り当てる、投資する、分配する、浪費する。時は金なり。経済学の時間。
フローとしての体験の特徴は、時間に関する主体的な態度を含みます。
物理学の時間、経済学の時間のゆがみ。
ある意味、「時間」の本来の意味を示唆しているのがフロー体験である気がします。
ここでは、フローをどのように活用すべきか、考えてみます。
心理的カオスと心理的秩序
はじめに、意識について考えます。
意識は常に「何かについて」の意識です。対象があります。
対象を失った意識はカオスに陥ります。
ぼや~とした意識になります。
意識はその本文から、常に対象を持ちますので、対象を失った意識は勝手に対象を探します。
「いま」の対象がないため、往々にしてそれは過去の失敗や将来の不安といった、ネガティブなものになりがちです。
意識に明確な対象を与えること、常に新鮮な「いま」の対象を与えることが重要です。
幸福感はすぐに逓減します。
それは実現した瞬間、「いま」の対象ではなくなるからです。
動かない状態は対象にはなりません。
心理的なカオスを回避し、「いま」の新鮮な対象を与え続けることで心理的な秩序がもたらされます。
その1つの方法がフローと思います。
フローの発生条件
では、フローを経験するにはどのような条件が必要なのでしょうか。
フロー体験者の体験談から、以下のような条件を抽出できます。
- 能力と釣り合った挑戦すべき課題がある。
- 活動そのものへの注意集中できる。
- 明確なルールがある。
- 直接的なフィードバックがある。
1つ目は、前述したとおり、挑戦と能力のバランスです。
自分の能力をよく理解し、適切な課題に挑戦することが重要です。
2つ目は、活動に集中できる環境が必要ということです。
たとえ、短時間でも、外部からの干渉のない集中できる自分の時間を持つ必要があります。
3つ目は、明確なルール、または目標をもつ必要があります。
ルールがないと目標自体が不明確になります。
最後が、フィードバックです。
自分の行為がもたらす効果が、直接的に認識できる必要があります。
フィードバックにより、自分が自分の行為を統制している感覚が生まれます。
スポーツや趣味等は、上記の条件を満たしていることは理解できますし、仕事や勉強も同様に満たしています。
身体的フローと精神的フロー
フローは身体的活動であっても、精神的活動であっても体験できます。
スポーツや趣味だけでなく、音楽や絵画の創作活動、学術的な施策など。
仕事におけるルーチンワークであっても、フローの条件を満たすようにルールや挑戦課題を設定し、フィードバックを見出すことができればフロー体験となりえます。
固定観念を捨てて、自分なりの考え方をもって体験の質を向上させてることが重要です。
仕事や勉強はつまらない、テレビは楽しい、家族団らんは楽しい等の固定観念は捨てましょう。
一般に「こうあるべき」「こう思うべき」という体験は、必ずしも全員に適切であるとは限りません。
前述したとおり、僕たちは多かれ少なかれ、「仕事や勉強」「生活維持活動」など、時間の8割近くを費やして、生活のために必要な活動を行う必要があります。
その活動の質をいかに高めるか、それが充実した豊かな人生をおくるための重要な課題と思います。
フローはその1つの方策となります。
まとめ
本記事では、フローとはどういう体験なのか、どういう条件で体験できるのか、という観点でまとめました。
フローの条件を満たす活動は、自己を高める活動ともいうことができます。
自分の能力とバランスした挑戦。
それがもたらすフロー体験は、能力を向上させ、次のより高い挑戦を引き出します。
日常活動のなかにフローを意識して、より高い自己を実現していきましょう。
- フロー体験は幸福感とは異なる条件で発生
- フローが起こりやすいのは「レジャー活動」「仕事・勉強」
- 心理的なカオスを回避せよ
- フローの4つ発生条件を活用
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