自分だけがんばっても、周りの人たちがついてきてくれないんだよね。
みんなのためをおもって頑張っているのに、自分のことはちっとも幸せに思えないわ。
そんなひとは、自分という「とらえ方」を変えることで、新しい視野が開けるかもしれません。
この記事では、ユング心理学の日本の先駆者であった河合隼雄先生の京都大学での最終講義をまとめた『こころの最終講義』を読んで、ユング心理学の考え方を使った自己実現の在り方を考えてみたいと思います。
自分を理解して、人生を豊かにする参考になれば幸いです。
シンクロニシティとは
シンクロニシティとは、ユングが提唱した「同時的に発生する意味ある偶然」を意味する概念です。
普段、僕たちは、ものごとを時間で考えて、「原因」と「結果」でもってとらえています。
ふとんをかけずに寝たので(原因)、風邪を引いた(結果)、とか。
これは正しいです。
この考え方は、科学的な分析の歴史的な成功を背景にしています。
科学の原則は、「誰が」「いつ」測定しても「同じ結果」になるものを、正しいものとすることです。
科学の成功により、この考え方が一般的になり、人類は大きな発展を手にしました。
しかし、「自分」のように分析する対象が、分析する主体(自分)を含む場合はどうでしょうか?
これは、「誰が」「いつ」測定しても「同じ結果」になるとは絶対に言えないですよね?
そこで、ユングは深層心理を考えるための道具(概念)として、「シンクロニシティ」を提唱しました。
「共時性」「同時性」「同時発生」と訳されます。
ユングは、「同時的に」発生したすべての出来事を、「原因」と「結果」ではなく、そこにある「意味」を考えていきます。
これがシンクロニシティです。
シンクロニシティによって自分を理解する
よくわかりません。。。
たとえば、予知夢などを考えてみましょう。
私がAさんが事故にある夢をみたとします。
朝起きたとき、Aさんが事故にあった実際に連絡がきました。
私の夢と、Aさんの事故は、科学的にはまったく関係ありません。
しかし、「私がこのような夢を見た」という事実と、実際の事故とは、「私」にとって「意味」のある事実です。
このように、何が同時に不思議なことがぱっと起こるが、それは因果的に説明できない。
このようなときに、シンクロニシティによって、「意味」を考えていきます。
具体例として、河合先生が講義で紹介している事例の要約です(わかりやすいよう意味を変えないよう内容を少し変えています)。
Aさんは、占いで「高みに上がるものは落ちる」と出たことが気になってどうしようもなく先生に相談に来ました。
故郷に帰るときに「飛行機が墜落するのではないか?」
Aさんは先生と何度も何度も会話していくうちに気づきました。
永くあこがれていた故郷に帰るということで、実際以上に故郷を美化し、親類との関係も素敵であると期待していたことに。
先生は言いました。
「占いはどうしましたか?」
Aさん「ああ、そうでしたね。そんなことで来たんでしたね」
先生「すごく面白いとは思いませんか?「高みに上がるものは落ちる」ってイメージはすごいじゃないですか」
Aさんは、故郷に対する思いのあまり、故郷をものすごく高くみて、そのまま行くと、大きく失望していたことに、はっと気が付きました。
自分を変えて回りを変える
自分は、自分からは逃れられません。
つまり、自分の周りで起こるすべての出来事は、自分にとって何か意味があるからそこにあるのです。
「Bさんは、株で儲けてうらやましい。暴落して大損すればよい。」
「Cくんは、いつも細かいことで文句をいってくる。夜も眠れない。」
そんなときには、シンクロニシティを意識して、個々の出来事だけでなく、自分を取り巻く周りを見渡して、そこに含まれる「意味」を考えてください。
「なぜ、Bさんをうらやましいと思うのだろう。Bさんの存在は自分にとってどんなメッセージなんだろう」
「Cくんのアドバイスはなぜ文句に聞こえるんだろう。Cくんの行動は自分にとってどんな意味があるのだろう」
ユングは、無意識が自己を実現するために、「イメージ」としてメッセージを与えると考えています。
シンクロニシティの見方から、全体の一部として自分をとらえ、そこにある「イメージ」をとらえることで、自分を変えるきっかけとすることができます。
そして、自分を変えることで、自分を取り巻く周り全体がもつ「イメージ」が変わり、自分にとってよりよい人生が得られることにつながっていきます。
これがユングが考えていた自己実現のプロセスです。
まとめ
すべてを「原因」と「結果」から考えることは、自分を含む「ひと」を考えるときに、かならずしも正しいとは限りません。
いろいろな考え方で、自分や「ひと」を考えていくことで、新しい見方や考え方を発見し、よりより人生につながっていくと考えます。
ぜひ、ほっと一息。シンクロニシティで考えてみてはいかがでしょうか?
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